はばたけ翼 第29号

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はばたけ翼

平成30年度介護保険法改正③

 平成30年4月より新しい介護保険法の下で現場が動き始めている。今回は「③地域共生社会の実現に向けた取組推進」ついて考えてみたい。
 共生型と言えば、1993年(平成5年)に、富山赤十字病院を退職した看護師3人が立ち上げた「民営デイケアハウスこのゆびとーまれ」が有名である。中の一人、惣万佳代子さんは病院看護師として限界を感じ(医療現場では、何度高齢者の命を助けても、最後の場面で「家に帰りたい」「畳の上で死にたい」と泣く場面が多々あった)、「このゆびとーまれ」を設立している。惣万佳代子さんの考える「赤ちゃんからお年よりまで、障害があってもなくても一緒にケアする活動」と、「縦割りの壁を打ち破った行政の柔軟な補助金の出し方」を富山型デイサービスと呼ぶようになり、国内の福祉関係者の共感を呼び、「共生型」として全国へ広まったのである。この取り組みを制度の一つとしたのが、今回の改正の趣旨である。
 この思想を福祉現場にあてはめると、障害サービスを長年活用して、自宅や施設で暮らしてきた方が、65歳を迎えた途端に「介護保険優先の原則」に乗せられて、一方的に使い慣れたサービス事業所から離れる事になることを防ぐことができる。つまり今まで利用してきた障害者サービス事業所において、介護保険サービスを受けることが出来るというのが、共生型の利点である。もちろん、高齢者の通所介護事業所に障害者も通えるようになるので、相互乗り入れ的なイメージの方が正しい姿であり、そこに児童のサービスを横だしできれば、まさに富山型であり理想の制度と言える。具体的に言えば「放課後デイサービス」と「保育園」と「学童保育」と「高齢者通所介護」が定員と人員、設備基準だけ守れば受け入れ可能となり、社会的弱者というくくりを超えて共に生きる場所が創造される。私も現在の職場に自分の子どもを連れてきていたし、今でも職員の子ども達がデイサービスで過ごす姿がある。
 時折、そんな事をして良いのか?と外部から聞かれるが、私は「何の問題もなく、むしろ望ましい在り方だから、会社として積極的に進める」と答えている。一方、共生型には別の心配がある。介護保険の二号被保険者は40歳以上である。その理由は若年性アルツハイマーの発症が40歳以上だからだ。しかし、すでに40歳からの保険料徴収では介護保険財政は維持できない。そこで障害と介護を一つの制度にして、20歳から保険料を徴収するアイデアが出てきた。私達は明日、障害者になる可能性があるから、20歳になったら保険料を納めてください!という論理は怖いほど筋が通っている。(続)